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更新:2010/9/5

河合隼雄 物語を生きる表紙画像 河合隼雄 物語を生きる

大塚信一[著]
46判上製・398頁・定価3570円(税込)/2010年10月刊行/ISBN:978-4-901510-94-3

東西を結ぶ新たな人間科学という物語―
昔話の研究から、明恵の夢の分析、そして『とりかへばや物語』『源氏物語』論へ。宗教と科学の接点に立ち、東洋と西洋の根源的な理解を目指した、日本人初のユング心理学者・河合隼雄の稀有で壮大な物語。

[著者]大塚信一(オオツカ ノブカズ)
1939年、東京に生まれる。63年、国際基督教大学卒業。同年、株式会社岩波書店入社。雑誌『思想』編集部をスタートに、岩波新書(青版・黄版)、「岩波現代選書」「叢書・文化の現在」「新講座・哲学」「河合隼雄著作集」など数々のシリーズ・講座・著作集を世に送る。また84年、編集長として季刊誌『へるめす』(編集同人:磯崎新、大江健三郎、大岡信、武満徹、中村雄二郎、山口昌男)を創刊、学問・芸術・社会にわたる知の組み換えと創造を図る。97年〜2003年、代表取締役社長。現在、つくば伝統民家研究会(古民家再生コンサルティング、古材等販売)代表、社会福祉法人日本点字図書館理事、東アジア出版人会議理事。著書に『理想の出版を求めて 一編集者の回想1963-2003』『山口昌男の手紙 文化人類学者と編集者の四十年』『哲学者・中村雄二郎の仕事 <道化的モラリスト>の生き方と冒険 』『河合隼雄 心理療法家の誕生』(いずれもトランスビュー)がある。


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目次
はじめに 

序 章 新たな物語のはじまり

   1 慎重な基礎作業 
   2 昔話を講義する 

第一章 西洋の昔話の研究

   1 グリム童話を素材に
   2 母性の二つの側面
   3 「怠け」の意味
   4 心の相補性
   5 いばら姫の眠り
   6 トリックスター、ヨハネスの働き
   7 王子のイニシエーション
   8 「なぞかけ姫」と「なぞ解き姫」
   9 女性の心の中のアニムス
   10 個性化の過程は一般化できない
   11 日本人の意識構造

第二章 日本の昔話の特色

   1 日本の昔話に挑む
   2 あわれの感情
   3 山姥の両面性
   4 鬼の笑いとは何だったのか
   5 きょうだいの結合
   6 日本人の抱く二つの女性像
   7 異類女房譚
   8 東西の「手なし娘」の話
   9 ユングの四位一体説の応用
   10 「炭焼長者」の意志する女
   11 片側人間の悲劇

第三章 さまざまな知的冒険

   1 科学主義を超えて
   2 無意識の科学の確立を目指して
   3 夢と転移
   4 トランスパーソナルとニューサイエンス
   5 たましいのはたらき
   6 共時性の現象
   7 死と臨死体験をめぐって
   8 イスラーム神秘主義と「意識のスペクトル」
   9 自然(ネイチャー)と自然(じねん)
   10 心理療法は宗教と科学の接点にある

第四章 仏教への関心

   1 菩薩とマンダラ
   2 阿闍世物語と十牛図の検討
   3 明恵『夢記』との出会い
   4 日本人と夢
   5 明恵の生きた時代
   6 捨身と再生
   7 耳を切る
   8 明恵の意識の変遷
   9 明恵と女性たちとの関係
   10 華厳の教えの夢

第五章 物語と人間の科学

   1 現代作家たちとの交流
   2 物語の意味
   3 『とりかへばや』の筋書き
   4 多様なイメージと読みを与える構造
   5 物語論の展開
   6 『源氏物語』を読み直す
   7 紫式部という女性の物語
   8 「父の娘」
   9 光源氏の変貌と紫マンダラ
   10 宇治十帖における女性の生き方の追求
   11 物語の冒険

終 章 物語を生きる
   
あとがき
人名索引


本文より
はじめに

 本書は、私の河合隼雄論の第二部に相当するものとして構想された。第一部は、『河合隼雄 心理療法家の誕生』(トランスビュー、二〇〇九年)である。

 本書では、河合氏の自らの身心を賭けた壮大な試みについて、私の力の及ぶかぎり論じてみるつもりである。
 その壮大な試みとは、西洋と日本(あるいは東洋)の異質な文化のありようと、それをどうすれば互いに深い次元から理解することができるようになるか、さらにその理解の上に、人間同士のより堅固な関係をいかに築くか、ということであった。

 その際河合氏は、ユング派の心理療法家として、通常の分析的な方法を駆使するのみならず、実に大胆に、科学的アプローチの限界ぎりぎりのところでの挑戦を試みているのである。

 換言すれば、それは既成の自然科学、社会科学、人文科学といった区別を越えて、二十一世紀にふさわしい新しい人間科学を構築しようとする試みであった、と言うことも可能であろう。

 その試みは、まず、昔話の比較研究から始められた。それは同時に、二十世紀的な科学の方法に対する根源的な問い直しの出発を、意味するものでもあった。

 次いで、宗教をはじめとする人間のさまざまな超越体験のありようを検討することを通して、河合氏は問題の本質に迫ろうと試みる。やがてその試みは、『明恵 夢を生きる』という著作となって結実した。そこでは、日本仏教史の中で特異な位置を占める明恵上人の生き方を通して、異性関係を含めた人間の根源的なあり方が、模索されたのであった。

 そして、心理療法の核心でもある物語論″(心理療法とは、クライエントが自らの物語″をつくることを助ける営為に他ならない、という)の構築を続ける一方、日本文学史における数多くの物語が投げかける問題を徹底的に追究することによって、日本文化の特質のみならず、日本人の心性に対する新たな発見に到達することになる。

 その発見が、河合氏の心理療法の、日本における定着と表裏をなすものであることは、言うまでもないであろう。それは同時に、両者の交差する地点に、河合氏が新しい人間科学を誕生させたことを意味するものであった。

 私は本書において、河合氏のこの壮大な試みについて、その詳細を追体験したいと思う。もし十全に追体験することができれば、そこにおのずから、河合氏の意図した新しい人間科学の姿を見てとることができる、と信じるからに他ならない。





あとがき 

 これでやっと、河合氏との約束を果たすことができた。といっても、実際に河合氏と約束した訳ではなく、三年前に河合氏が逝ってしまわれた折に、私が自分自身に対して誓っただけのこと、つまり仮空の約束にすぎないのだが。

 河合隼雄という一人の人間が、どのような生涯を送り、どんな仕事をしたか。それを明らかにすることは、河合氏の著作活動に深く関わった私にとって、当然の義務であるかのように思えたのだった。

 義務を遂行しようと努めているうちに、それは義務ではなくなり、私自身の願いに変わっていった。日本人として稀有の生き方を貫いた河合氏の、真の姿を捉えたいという、強い願いに。

 河合隼雄論の第一部に当たる『河合隼雄 心理療法家の誕生』は、私自身が行なった河合氏へのインタビュー(『未来への記憶』上・下、岩波新書、二〇〇一年)を手がかりにすることができた。加えて、河合嘉代子夫人や河合雅雄氏をはじめ、多くの方々に助けていただくことができた。

 しかし、第二部に当たる本書については、どなたの助けも仰ぐことをしなかった。河合雅雄氏や樋口和彦氏は、いつでも助力を惜しまない、と言って下さっていたのだが。

 それは、この第二部はそのすべてが私の解釈であるからだ。もちろん、私は自分の解釈にそれなりの自信を持っている。しかし、違った見方をすれば、当然、異なった側面が見えてくるはずだとも思う。それ故に第二部に関してだけは、自分一人で行なうべきだ、と考えたのだ。

 とすれば、私に残された唯一の道は、河合氏の著作を徹底的に読み込む以外にない。自分が編集した本を含めて、くり返し読んだ。何回も読むうちに、不思議なことに、河合氏の声が聞こえてくるようになった。例えば、片子について書かれた文章は、河合氏の肉声となって、私の中に入ってきた。あたかも、懐かしい声を実際に聞く思いがしたのであった。

 結局、ここでも最終的には、河合氏ご本人に助けてもらったのだと思う。いったい私は、どのように河合隼雄氏にお礼を言えばよいのだろう。
 

 河合氏の著作からの多数の引用、図版の使用、私信の公開などを許可して下さった嘉代子夫人に深く感謝する。夫人は、なかなか先の見えない原稿の進行を見守って下さった。
 トランスビュー社の中嶋廣氏には、今回もまた編集の労をとっていただいた。的確な編集作業にどれだけ助けられたか分からない。校正の三森・$3476・子さん、装幀の高麗隆彦氏にもまたお世話になった。あつく御礼申し上げる。

 
 数日前に、小惑星探査機「はやぶさ」が、七年間の宇宙の旅を終えて、地球に戻ってきた。それは科学・技術の素晴らしさを示す、圧倒的な出来事だった。やがて太陽系誕生の謎も解明されていくことだろう。

 一方、河合氏は人間の内なる宇宙を、たった一人で冒険し、多くの仕事を残した。ユングを先達としつつ、河合氏はとりわけ日本人の心の謎に肉薄したのであった。「はやぶさ」と同様、河合氏に心からの拍手を送りたい。

二〇一〇年六月 大塚信一 
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